恋しくば
自覚はないらしい。その自覚の無さに、漬け込む女がいるってことらしい。
この自覚のない世話焼きお坊っちゃんに似合う女性像といえば……。
「わかった。きっと家柄の良くて一歩後ろをついてくるような、日本人女性タイプ」
「何がわかったのか」
「辻本と一番相性が良い女性のタイプをあたしなりに分析した」
良い焼き加減になった肉が、あたしの皿の方に入れられた。
ありがと、と箸を渡す。それから近くを通った店員にトングをもう一つ頼んだ。
「それは違うな」
肉美味しい……。感動で泣きそうだ。
辻本の声に前を見る。