恋しくば
聞き入れて聞き入れて、対処できなくなったところで女が飽きて「あんたと居てもつまんない」と言って辻本がふられるか自然消滅するの繰り返し。大学に入って辻本に出会い、観察してきた私にさえ分かる。
辻本の従兄弟である上羽によると今までずーっとそうらしい。寧ろすごい、すごすぎる。
頭は本当に良いのに。
「他にも良いところ、沢山あるよ。辻本には」
来る者を拒まない優しさとか、去る者を負わない冷たさとか。
視界の端に知っている人物が映り、手を振ってみる。辻本もそちらの方向を向く。
噂をしなくても影、上羽がこちらに気付く。