元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「そんなこと言わないで。わざわざ寒い中やって来てくれたんだから、あったか~いお茶でも飲んでいきなさいって。ほら、お菓子もあるから」
そう言ってセルドニキさんは甲斐甲斐しくお茶に色とりどりのジャムまでテーブルに並べてくれる。
彼のもとにおつかいに来るのはこれで数回目だけれど、いつもこんな調子だ。相当のおもてなし好きというかなんというか……子供の頃、よくお菓子や飴をくれた近所のおばあちゃんを思い出す。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
せっかく用意してくれたのだからと思い、少しだけ休憩していくことにした。淹れたての紅茶にアプリコットのジャムを入れて飲むと、芳しい甘酸っぱさがホッと緊張をほぐしてくれる。
そんな私を見て満足そうにうなずいてから、セルドニキさんはクレメンス様からの書類に目を通していった。
その間にも部屋には礼服姿の私服警察官がセルドニキさんに報告や指示伺いに来ていて、忙しそうだ。
「今夜は随分と警備の数が多いんですね」
「んー? 最近はいつもこうだよ」
セルドニキさんは書類から目を離さないまま返事をしてから、ちらりと窓の方を見やって言葉を続けた。