元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「……このことはくれぐれもご内密に」と前置きして、プロケシュ少尉が声を潜める。
「まもなくフランスでは政変が起こります。間違いありません。ブルボン王朝の治世にフランス人は限界を迎えています。そして水面下では、ブルボン王朝を失脚させたあとライヒシュタット公を王座に迎えようという勢力が動き始めています。ボナパルティズムの者だけではありません。フランスの名だたる将軍達がライヒシュタット公のフランス国王就任をオーストリアに正式に要請するつもりです」
プロケシュ少尉が話した極秘情報を聞いて、私の頭の中にハッとある事件が思い浮かぶ。
(――七月革命だ……!)
再びブルボン王朝が追放され、フランスが二度目の共和政を築く大きな革命だ。本来なら1830年の出来事なのだけれど、この世界では他の革命も時期が前倒しにズレている。もしかしたら今年中に起こってもおかしくはない。
「……プロケシュ少尉は、それを機にライヒシュタット公がフランスの王座につくべきだというお考えですか?」
おそるおそる尋ねると、またしても「違うわ」と首を横に振ったのはゾフィー大公妃だった。
「どう考えてもそれは無理よ。奇跡が起きて皇帝陛下がお許しになっても、ロシアやプロイセンが許さないわ。フランソワがフランスの王座についたら、ハプスブルク家がオーストリアだけでなくフランスまで支配することになってしまうもの。小国とは訳が違う。欧州のパワーバランスが崩れてしまうわ。ブルボン王朝の保守派だけでなく、ロシアやプロイセンまで敵に回すことになるのは、フランソワにとってあまりにもリスキーよ」
確かに……ゾフィー大公妃の言う通りだ。
フランスでライヒシュタット公を王に望む声は大きいけれど、その分リスクも大きい。まだ十七歳の若き青年が王座につくには、問題があり過ぎるだろう。