元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「――え……?」
瞳に映った彼の姿を見て、強烈な違和感に襲われた。そして何故彼がこんな厳重な牢獄に入れられているのか、瞬時に理解する。
「あなたが……ナポレオン・ボナパルト……ですか……?」
その男は――美しかった。
髪と瞳の色が違うことを除けば、まるでライヒシュタット公に生き写しなのだ。つまり――彼は、ナポレオンは若いのだ。まるで、二十代半ばの青年のように。
彼の歳は確か五十九歳だ。その歳でこの姿は若々しいという範囲を超えていて、はっきりいって不気味に思える。化け物扱いされて牢に入れられているのだとしても、納得できた。
私が二十一世紀で見たことのあるナポレオンの肖像画は、きちんと歳をとっていて、さらに言ってしまえば丸顔で太り気味なずんぐりむっくりな中年だった。
けれど今目の前にいるこの男はスラリとした長身に、端正な顔立ちをしている。髪の色は黒いけれど、ライヒシュタット公と双子だと言われたら信じてしまいそうだ。
(どういうこと? これっておかしい)
頭の中の肖像画のナポレオンと目の前の男を重ね合わせようとすると、グラグラと眩暈がして思わず頭を抱える。そのとき。
「この青年とふたりきりで話させてくれ」
ナポレオンが私達を前にして初めて口を開いた。