元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「俺はナポレオンであってナポレオンじゃない。四十年前にナポレオン・ボナパルトという男に成り代わったんだ。それより前は教皇にも、イギリス王にも成り代わったことがある。――五百年だ。俺は二十世紀のイタリアからタイムトリップし、十四世紀のフランスに放り出された。それから五百年、色々な人物に成り代わり様々な名で歴史を動かしてきた」
理解が追いつかない。五百年前から成り代わっているって……いったいどういうことなのだろうか。
まだ混乱している私に、ナポレオンは人差し指を立てて見せた。
「ひとつ。アウトサイダーは歳をとらない。ふたつ。アウトサイダーは死なない。みっつ。アウトサイダーは自分の意思で既存の人物に〝成り代わる〟ことができる。ただし成り代わった後は、その人物が本来迎える寿命の年齢までは、別の人間に成り代わることはできない」
ナポレオンの声が地下の壁に反響して悪魔の声のように聞こえる。
この異世界トリップがただの第二の人生なんかじゃなく、死ぬことも抜け出すことも出来ない呪いなのだと、彼は私に告げていた。
「う、うそ……そんなの信じない……」
「こっちへ来て何年か知らないけど、薄々気づいてるだろ? トリップしてからあんたは皺の一本だって増えちゃいないはずだ」
信じたくないのに、身に覚えのあることを指摘されてドキリとする。
二十一世紀に比べてろくな手入れができていなかったのに、不自然なくらい肌も髪も衰えていないことには気づいていた。
けど、それはこちらの環境が肌に合っていたか、或いはバーデンの温泉のおかげかな、なんて呑気に思っていたのに……。
自分の顔を両手で撫でながら、この悪夢が現実としてジワジワと身体に染みていくのを感じた。