元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「五分経った。会話は許可するが、これ以降は監視の元でとなる」
総督の言葉にナポレオンは茶化すように「はいはい」と肩を竦めると、私に向き直って鉄格子から手を伸ばした。
「で? あんた俺に用事があって来たんだろ? その箱の中身がそうなんじゃないのか?」
「あ……、はい!」
衝撃すぎる真実が津波のように押し寄せて呆然としていた私は、本来の目的を思い出してハッとする。
「ライヒシュタット公……あなたのご子息であるナポレオン二世閣下からのお手紙を預かってきました。実は、閣下は肺の病にかかっており医師に養生を言い渡されている状態です。どうかお返事を書いて、元気づけてはいただけないでしょうか」
手紙の入っている箱を渡すと、ナポレオンは中身を取り出し封蝋を破いて便せんを読み始めた。
「……閣下はたいへん立派にお育ちになっています。知性と品格に溢れ紳士的で、社交界では圧倒的な注目を集めていました。子供の頃からあなたに憧れていて、立派な軍人になろうと人一倍努力もしております。指揮官として部下の兵士達からもとても慕われております。公式式典でも立派に指揮官を務めあげました。ウィーンの人間の誰もが彼を愛しています。本当に……素晴らしいご子息です。褒めてあげてください」
手紙という手段を使って、ようやく父と息子が思いを伝えあえるのだと思うと、気持ちが昂って一生懸命に彼のことを語ってしまった。
ライヒシュタット公は寂しさと境遇に負けず本当に立派な若者に育った。そのことを少しでも伝えたい。