元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
 
――ライヒシュタット公。正式名はナポレオン・フランソワ・シャルル・ジョセフ・ボナパルト。まごうことなき、あのナポレオンの血を引いた息子。

あれからゲンツさんに聞いた話と、電子辞書で調べた内容を私なりにまとめてみた。

活躍を重ねフランスで皇帝になったナポレオンは、自分の後継者となる息子をもうけるためにオーストリアの王女を娶ることにした。

当然だけれどこれはオーストリアにとって屈辱なことだ。何度も王都を踏み荒らし領土を奪ったコルシカの悪魔に、王女まで差し出せと言われたのだから。

しかも、オーストリアの王家ハプスブルク家は十三世紀から続く超名門一族だ。『青い血』と呼ばれる高貴な血を重ね続けてきた一族にとって、フランス皇帝とはいえ元は一兵卒に過ぎないナポレオンと婚姻を結ぶことがどれだけ無念だったことか、想像に易くない。

子供の頃からオーストリアの敵だと憎み続けてきたナポレオンのもとに嫁がされたのは、現在の皇帝フランツ一世の長女、マリー・ルイーゼ王女。

1810年にフランスに嫁がされた彼女は、翌年に男児を生む。

フランスの英雄ナポレオンと、ハプスブルク王家の高貴な血を引いた王子、それがナポレオン・フランソワ・シャルル・ジョセフ・ボナパルトだ。

生まれながらに次期フランス皇帝の座を約束された王子だけれど、その座はナポレオンの敗戦と失脚と共に泡と消える。

1814年にナポレオンがフランス皇帝の座を追われたあと、マリー・ルイーゼ王女は幼い王子を連れてオーストリアへと帰ってきた。
 
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