ハイリスク・ハイリターン
――ふ、と。
目が覚めたとき、窓の外はまだ暗くて。
静かに寝息を立てている透真を起こさないように、慎重に家を出た。
外は、少しばかり雨が降っていた気がする。
本当に細かい、霧雨ような。
そんな帰り道で、なぜか涙が溢れた。
「あれ、 あれ?なんでだろ」
熱い体温、上気した頬、混じる汗。
このままひとつになれるのでは、と錯覚を起こすほど近くにいた。
初めて知る大きな背中に、些細な爪痕を残した。
少しでも、私という存在を刻みつけたくて。
表情も、切なそうに私の名を呼ぶことも。
わたしにだけ向けられるすべてが、たまらなく嬉しかった。
それなのに。
次から次に溢れる涙は、なかなか止まってくれない。