敵国騎士と命懸けの恋
「颯真(そうま)、よくもまぁお楽しみの邪魔をしてくれたね」
「ここは病室です。他所でお願いします」
負けずと言い返した彼は、国王の前でも堂々としている。
「颯真も傷が癒えた頃だろうから、新しい任務を与えようかな」
新しい任務?
まだ包帯を巻いて万全ではないことは明らかなのに。なんて無茶苦茶な王なんだ。
「どう?引き受けてくれる?」
「仰せのままに」
窓から国王へと向き直った颯真は意志の強そうな黒い瞳をしていた。
「下級騎士、颯真に命じる」
国王は私を見た。
嫌な予感…
「煌紫国王の七海姫を監視せよ」
窓から爽やかな風が吹き抜け、
銀髪と黒髪を揺らした。
「無謀な姫が逃げ出そうとするのであれば、
殺せーー」
コロセ?殺セ。
国王や他の誰かに殺されるのであれば、まだ良かった。
けれど貴方だけにはーー
しかし私の意思に反して、
淡々と颯真は言った。
「御意」
それが彼の迷いのない答えだった。