敵国騎士と命懸けの恋
暗闇に溶け込む黒髪と黒い瞳。
「怖い夢でも見たか」
「…見てないです」
「そうか」
颯真は足音を立てずにベッドに戻ったけれど、いつもとは違いカーテンを閉めないでいてくれた。
もしかして心配してくれていますか?
「夢でないです。現実を思い出しただけで…」
「そうか」
先程と同じ答えに会話は続かず、再び夜の静寂に包まれる。
目を閉じてしまえばまた同じ夢を見てしまいそうで、見慣れない天井を見つめる。
「国王に見つからずに、脱走する秘密の抜け道なんてありませんか?」
まだなにか話していたくて、それらしいことを聞いてみる。
「部外者に教えるわけないだろう」
「冷たい人」
いつ殺されるか分からない私に、情けをかけるつもりはないようだ。
「まずは身体を治せ。今の状態では満足に動けやしないだろう。逃げ出すなんてもってのほかだ」
「でもこうしてお部屋の中にばかりいると、気持ちも落ち込みます。窓の近くに行っても良いですか?」
彼は答えの代わりに綺麗な刺繍の施されたカーテンを開けてくれた。