敵国騎士と命懸けの恋

暗闇に溶け込む黒髪と黒い瞳。


「怖い夢でも見たか」


「…見てないです」


「そうか」


颯真は足音を立てずにベッドに戻ったけれど、いつもとは違いカーテンを閉めないでいてくれた。

もしかして心配してくれていますか?


「夢でないです。現実を思い出しただけで…」


「そうか」


先程と同じ答えに会話は続かず、再び夜の静寂に包まれる。

目を閉じてしまえばまた同じ夢を見てしまいそうで、見慣れない天井を見つめる。


「国王に見つからずに、脱走する秘密の抜け道なんてありませんか?」


まだなにか話していたくて、それらしいことを聞いてみる。


「部外者に教えるわけないだろう」


「冷たい人」


いつ殺されるか分からない私に、情けをかけるつもりはないようだ。


「まずは身体を治せ。今の状態では満足に動けやしないだろう。逃げ出すなんてもってのほかだ」


「でもこうしてお部屋の中にばかりいると、気持ちも落ち込みます。窓の近くに行っても良いですか?」


彼は答えの代わりに綺麗な刺繍の施されたカーテンを開けてくれた。


< 16 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop