敵国騎士と命懸けの恋
ゆっくりと明かりの差し込む方へ向かう。
綺麗な月と無数の星が広がっていた。
窓の外に視線を向けたまま言う。
「…颯真さんは不思議な人ですね」
「なぜそう思う」
「私のことを殺すと言いながら、貴方は優しいから」
「逃げたら殺すと言ったまでだ」
颯真の真向かいにあるベッドに腰を下ろす。
「あの国王様の愛人になる気は少しもないけれど、相手が貴方だったら良かったかも」
「なんだそれ」
今までお見合いをしてきた数え切れないほどの男性と、颯真はどこか違う。私に媚びない姿勢なのか、強い意志を放つ瞳なのか、彼特有の雰囲気であるのか、理由はよく分からない。
「そういう嘘で俺を惑わそうとしているなら、無駄だぞ。ハニートラップに引っ掛かるほど単純にはできてない」
「そんなつもりは…それにあの暴君から私を奪う価値が自分にないことくらい知ってるもの。私にあるのは煌紫王国の姫というくだらない肩書きだけ。まぁこの魁王国ではその肩書きすらゴミみたいなものよね」
一国の姫はなにも持たない。
ただ両親が望む相手と結婚して国の繁栄へと貢献するだけだ。それでも見知らぬ土地で死ぬくらいなら、従っておけば良かったのかもしれない。
「王族とは自分本位で感情的で利己的な人間だと思っていたが…お前はこんな時でも冷静だな。死にたくないと喚く力も残ってないか」
「喚いたら、助けてくれる?」
颯真を見つめる。
その答えが分かっていながら問うなんて馬鹿みたいだね。