不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
俺の一人住まいのマンションは大学から住んでいる部屋で、ここには友人は誰も入ったことがない。20歳までの間に付き合った女も誰ひとり入ったことはない。
最初に通す相手が翠で良かったと思いつつ、俺は翠を部屋に招き入れた。

落ち着かない様子でソファに座っている翠のためにコーヒーメーカーに豆をセットする。
落としている間に局長から電話があった。

『今日は解散だ。結論から言うと、証拠は充分撮れた。おまえたちが起こした騒ぎの時、俺が撮影しておいた』
「はい、申し訳ありません」
『組の連中はかなりしぶとくおまえらを探していたけれど、諦めた様子だな。店側には財務省から今回の経緯説明がいくし、警察庁にも連絡済だ。これ以上の騒ぎになることはない』

局長があちこちに根回ししてくれたのだ。しかし、かなり頭を下げまくったに違いない。

『本作戦メンバーは全員帰路についた。でも本当に危なかったぞ。朝比奈に伝えろ、月曜は説教だって』
「伝えます。が、俺の失態です。バディなので」
『じゃあ、豪も一緒に説教だ』

局長は冗談めかして笑うけれど、実際は冗談にできるようなことではない。局長は後始末に、さらにあちこちにつつかれ頭を下げなければならないだろう。進退問題にならないといいんだが。
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