不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
電話を切ると、だいたいのことが聞こえていたであろう翠が、しゅんと背を丸めていた。俺はマグカップにコーヒーを淹れ、翠の前に置く。そして、牛乳をどぼどぼ継いだ。

「ほら、カフェオレ好きだろ?砂糖入れるか?」
「……いらない」
「飲んで少し落ち着いたら風呂入って化粧落としてこいよ。服はジャージでもなんでも貸すから」

横に座り、マグを手に持たせると、翠がぽろぽろと泣きだした。

「翠」
「私……みんなに迷惑かけた……」
「ああ、その通りだ」
「うまくやれると思ったのよ……だけど甘かった。結果、みんなを危険にさらした……。局長、私のせいで処分されないかしら……」

泣きじゃくる翠の頭を撫でる。

「翠は自分のバイタリティを過信している。おまえのスタンドプレーで解決できるほど今回の件は甘くない」
「……うん」
「おまえは人より能力が高い。知能の面だけでなく、精神力や体力も優れている。何より困難を切り抜ける力がある。それは10代からずっと一緒に過ごしている俺が一番よく知っている」

翠が俺を潤んだ瞳で見上げる。
< 120 / 180 >

この作品をシェア

pagetop