不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
本日私は、斎賀武蔵氏に呼ばれ、会食だった。豪の婚約者として同席しているといった方がいい。
そして、局長は当主の嫡子として同席している。ゆくゆくは局長が斎賀家当主になるんだもんね。順当にいけば、その後は豪にお鉢が回ってくる。
ちなみに、私と豪を許嫁という古くさい絆で結んだのは、前当主で豪の曾おじいさまだ。

「そもそも結納や婚約式の話が出ていないということに心配をしているんだぞ」

おじいさまは呆れたように続ける。久し振りに孫の顔が見たいと招集されたものの、今日がおじいさまのお小言会だったのだと実感する。

「私ももう80歳だ。そろそろ孫が落ち着いたところを見ないと、安心してあの世に逝けないじゃないか」

私は横目でちろんと豪の顔を見た。この瞬間、豪の考えてることがわかる。『絶対100歳まで生きるだろ、あんた』って思ってるに違いない。
私も思う。豪のおじいさまって長生きしそう。

「そうはおっしゃいますが、僕も翠さんもまだ入庁三年目の新人です。仕事を覚えるのに必死で、結婚まで頭が回りませんよ」

豪は箸を手に、普通に食事をしながら答える。ぞんざいな態度じゃないけれど、あなたの話をすべて聞くとは限りませんと言った雰囲気だ。
そもそも祖父と孫の関係だものね。豪にはそのくらい主張してもらわなきゃ困る。
私はまだ結婚なんかしたくない。
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