彼女のセカンドライフ

「父はね? プロのサーファーだったの。伝説の男とまで言われたのよ?」
 
武尊は目を丸くした。クスッと笑って凪美子は話を続けた。

凪美子の父は、サーフブランドのショップを経営していて、自分がデザインした服やネイティブアメリカンのアクセサリーなどを販売していた。

「あるアイドルが物凄く売れていた時代に、父のブランドの服が好きで、それを着てくれたのかがきっかけで、そのお陰でとても流行ったのよ?」凪美子は言う。

でも時代の流れと共に、廃れて行ってしまった。

「一応今でも、幻のブランドって言われてるけどね? その時々のニーズに合ったものを見つけ出せず、時代の波に乗り遅れて、父はただただ、腕組して傍観してるだけだった。その時本当に、波に乗ることまで辞めてしまったのよ」
 
その後の父は、廃人のようになり、かつての往年の輝きは見る影もなかったと、俯いて苦笑する凪美子。

< 32 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop