別れの曲
3.
 これじゃあ「取材」ではなくて、「世間話」だ、と彼は思った。いつもなら、アルバムのコンセプトとか、収録曲を選んだ理由を聞かれるのに、いきなり「別れの曲」について突っ込まれるとは思わなかった。若尾春香は、「4分の3は記者として、4分の1はファンとして」と言ったが、4分の4すべてファンとして取材をしているとしか思えなかった。


 ジャズミュージシャン・芹沢歩が奏でる「別れの曲」はジャズアレンジだった。それは、彼がいつも弾いているのがジャズだったから、「NOTES」でリクエストをされて、その曲を始めて弾いた時も、癖でジャズ風になってしまったからだった。それでも、リクエストした人間には好評だった。
< 9 / 19 >

この作品をシェア

pagetop