エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
エメラルドの邂逅
 シンディが異変に気が付いたのは、バートに送ってもらって侯爵家に戻ったときだった。
馬車から降りるとすぐ、母が心配そうな様子で駆け寄って来たのだ。

「シンディ、ベリルはどうしたの?」

「ベリル? 今日は一度も顔を見ていないけど」

「ヒューゴ様が、あなたが呼んでいるって言って連れて行ったのよ?」

意外な言葉に、シンディは息をのむ。
昼間、ヒューゴとは王城で会った。そのときの会話で、ヒューゴがベリルが婚約関係を終わらせたいと考えていることを知り、ショックを受けていたのはわかっている。
だからベリルを連れ出したのか? シンディが呼んでいると語って?

伯爵子息ともあろうものが、そこまで姑息な手段を使ったことにシンディは納得できない。
嫌な予感がして、シンディはバートを見上げた。

「どうしました? シンディ様」

「気になることがありまして……、バート様、申し訳ないんですが、アシュリー伯爵家に向かってもらうことはできますか?」

「構いませんが……アシュリー伯爵家になにが」

「妹が……ベリルがご子息のヒューゴと一緒にいるのかどうか確認したいんです」

バートは一瞬考え込むような仕草をして、前かがみになって、シンディに耳打ちする。

「……失礼ですが、ヒューゴ殿とベリル様の関係は?」

「婚約者よ。でも、ベリルは婚約破棄をするつもりだった。この大事なタイミングで彼とふたりになろうとはしないと思うわ」
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