エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~



エメラルドの光が収まったとき、ベリルは体に力がみなぎるのを感じた。
逆にフェンレイが扉を押してくる力は弱まった気がする。
おそらく、ベリルの先ほどの願いが、エメラルドによってかなえられたのだ。

ベリルは足を踏ん張り、扉へ背中を押し付ける。先ほどまでと違って、ふたりの力の強さは同等程度になっており、開きかかっていた扉を押し戻すことができた。

「くそっ、なぜだ? 力がでねぇ」

扉の向こうから、フェンレイの弱音が聞こえてくる。

「おい、開けろ。そこからどけよ」

「いやです。乱暴されると分かっていて、開けるはずがないでしょう?」

「そりゃそうだが……。畜生、こっちだって好きでこんなことしてるんじゃねぇよ」

先ほどの願いは勇気と力だ。この魔法が交換の魔法であるならば、ベリルはフェンレイの勇気を少しばかり奪ってしまったことになる。
ベリルの気質が少しでもフェンレイに流れたのなら、話を聞いてくれるのではないかと思えた。

「ヒューゴ様は、いつからあなたと知り合いなの? 昔からこんなひどいことをしていたの?」

「……旦那は最初はあんなことを言うような人じゃなかった。二年前に出会ったときは、闇市場の情報を売ってほしいってだけだったんだ。金払いが良くて、俺は率先して情報を旦那に売った。だが、欲に目が眩んだんだろうなぁ。段々旦那の要求するものが情報だけではなくなっていった。気が付けば俺もすっかり盗賊になっちまった」
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