エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
魔石の秘密


ローガンの自室にいるときに顔がもとに戻ったダレンは、その姿を侍従に見つかり、取り押さえられた。
人相書きともよく似ていたことから、逃亡していた賊のひとりだと判断され、早々に牢獄に入れられる。
だが、代わりのように王子の姿が全く見えなくなり、城中が騒然とし始めたタイミングで、三頭の馬と一台の馬車が戻ってくる。その中にボロボロの格好で馬をあやつるローガンがいたのだから、誰もがあ然としたものだ。

「ローガン王子! 一体何が。そのお召し物は一体」

「うるさい。裸でいるわけでもないんだから、そんなに騒ぐな」

「いけません。お召し替えを。まずは湯に入って……」

「麗しいお顔に汚れが……」

王太子付きの召使たちが、こぞって彼を囲みだす。対するローガンは不満そうだ。召使たちが自分を大事に思ってくれるのはありがたいが、こう見た目のことばかり言われると辟易する。

助けを求めてコネリーに視線を向けたが、彼はすました顔で召使たちにローガンを引き渡す。

「取り調べはこちらで先に行っておきます。ローガン様はどうぞ支度を整えてください」

「おい、コネリー」

「ベリル様も温かい湯につかって落ち着かれた方がいいからですよ。彼女の性格では人を待たせれば気になるでしょう。でも待たせているのがあなたなら問題ありません。王子殿下ですから」

要は、ベリルが余計な気遣いをしないように、王太子自ら時間を稼げということらしい。
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