エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
エピローグ
人間の足をもらった人魚は、恋に破れ、海へと身を投げました。
人間となった人魚には、水の中で呼吸するすべがありません。
大切な妹が死んでしまうと思ったエメラルドの人魚は、悲しくなりました。

すると光が妹の体を包み、彼女の人間の足は見る見るうちに人魚の尾っぽへと戻ったのです。
エメラルドの人魚が、感謝を込めて青い魔法使いを見つめると、なぜか彼の息は絶え絶えになっています。

彼が使えるのは、交換の魔法のみ。しかも本来は、魔法をかける本人とかけられる相手の同意がなければ、成就しない魔法です。
青い魔法使いは、人が死を目前にしたときに本能的に沸き上がる“死にたくない”という一瞬の願いを見逃さなかったのです。
その願いを受け、彼は彼女にアメジストのしっぽを返しました。代わりに彼が得たのは、人間の足と消えゆく命です。
青い魔法使いは、どうあってもエメラルドの人魚の心を手に入れられないことに絶望し、死を望んでいたのです。

最後に、青い魔法使いは言いました。

「俺は、死を選んだ彼女の気持ちが、分かるよ。……恋をして。何もかも捨てても良かったんだ。この恋が手に入るなら。そしてこの恋が叶わないなら、自分の命なんて捨てても良かったんだ」
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