先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「西川さん…」

思わず出て来てしまった私を松崎さんが小さく呼ぶ。

「私達いじめてる訳じゃ…」
「そうよ、山片課長に告白してもいいか聞いてるだけよ」

そんな風には全然聞こえませんでしたけど?!

「そんなの聞かなくても勝手に告ればいいじゃない。寄ってたかって、一人を取り囲むなんて底意地の悪いことしてないで、正々堂々とやれば?」

「そ、そんな事言われる筋合いは…」

「何?無いって言うの?私には自分に自信がないから、可能性のある子を蹴落としてやろうってしか見えないけど?だいたい3人とも告白してそのうちの誰かがOKもらったら他の二人はどうするの?」

「………」

何も言えなくなって黙る3人。

「早く告りに行けば?誰が難攻不落の山片課長と付き合えるか見ものね?あっはっはっ!」

そう言って笑ってやると3人は悔しそうにスゴスゴ引き上げていった。
賭けにされてるって噂は聞いている。山片課長もお気の毒に‥。

ずっとぽかんとした顔をして聞いてた松崎さん。

「あ、あの、西川さん、ありがとうございます」

「何が?私は通りかかったら面白いこと言う人たちがいるから笑ってやっただけよ」

「それでも、ありがとうございます。…ダメですね、強くなろうと思ってるのに何も言えなくて…」

そう言って自嘲気味に笑う松崎さんに聞いてみた。

「本当はどうなの?山片課長のこと」

「………」

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