先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

最大の難関

航said
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日曜日

緊張気味の車の中。
花笑のご両親の家に結婚の許しをもらうため向かっている。

家庭教師をしていたとき何度となく通った道が見えてきたとき、昔を思い出し感慨にふける。
一人娘の花笑。
陽気でおしゃべりなお義母さん。花笑の天真爛漫さは母親譲りだろう、何度も夕飯をごちそうになった。
寡黙なお義父さん。銀行の重役をしており、花笑は意外といいとこのお嬢さんだったりする。
なんとなく苦手だった見透かしたような鋭い眼は、大事な娘に変な虫が付かないか心配してたからかもしれない。

「・・・・」

「航さん、緊張してる?」

助手席で心配そうにこちらを見る花笑。

「ああ、そりゃするだろう。この家も10年ぶりだな・・・」

丁度着いた、白いレンガ造りの大きな家。
花笑はここで育ち、俺と出合った。

「航さんが来ること、お母さんには伝えてあるから大丈夫だよ、きっと」

「ああ、だといいんだけどな・・・」

にっこり笑う花笑に苦笑いで返し、車を降りた。
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