先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

海斗と雅美

海斗said
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兄貴が帰って来た。可愛い嫁さんつれて。

俺の知ってる範囲で彼女がいたときの顔と全然違う兄貴を見て花笑さんに本気なんだなと思った。
兄貴はいつも自信満々で好戦的で俺はからかわれてばかりだった。
あんな眼差しの顔初めて見た。

雅美のこと、気付いてたとは知らなかった。
一生の不覚。
俺そんなにわかりやすかったか?父さん達にも気付かれてたなんて…。

雅美は同い年の幼馴染みで保育園の頃から一緒だった。
雅美は目がおっきくて明るくて負けん気の強い女の子で、俺は幼心に既に恋心を持ってたように思う。

父さんは根っからの寿司職人。子供に教えるようなことはしない。料理が好きだった俺は料理好きの母さんの見よう見まねで創作料理を作ってた。これが家族には結構好評で雅美にも時々食べさせていた。食べたときの美味しそうに笑う笑顔が見たくてますます料理に熱中した。
小学生の頃には父さんの跡を継ぎたいと思って、小6の時、俺は次男で跡継ぎは普通長男が継ぐものという一般常識も知らぬまま、家族に話した。

「俺、将来父さんの跡を継いで寿司屋になる!ついでに創作料理も出してこの店をでっかくしたい!」

「・・・・」

無邪気に言う俺に、目を合わせて黙りこむ両親。
口を開いたのは兄貴だった。

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