先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「そんなの、分かるよ。雅美の事は全部…」
「・・・・」
「兄貴の事なんか忘れさせてやる…」
真剣な顔で私を見つめる目が伏し目がちに近づいてくる。
キスをされたと気づいた時には自分も夢中になって応えていた。
漸く唇が離れ、恥ずかしくなって下を向いたら抱きしめられた。
私は浩二君と別れたときに言われたことを思い出した。
浩二君は2個上の先輩。もちろん航兄さんのことも海斗のことも知ってる。
「雅美は、今ここに居ない航さんの事が好きでも、いつかは俺の事をちゃんと見てくれると思ってた。でも…航さんの事より、雅美は海斗くんと一緒にいる方が幸せそうだ…。意外な伏兵がいたもんだ…。」
別れ際に呟かれた言葉をその時は理解できなかったけど…。
「雅美…」
海斗の体が傾いてきて押し倒されそうになったとき、私は逃げてすくっと立った。
「っと、おい雅美!」
「ごめん!頭の中ぐちゃぐちゃでちょっと冷静に考える!今日は帰るね!ばいばいっ!」
逃げられて面白くなさそうな声を出す海斗に早口で言い放って急いで部屋を出た。
どうしよう、どうしよう、私は航兄さんが好きだったはずなのに…。でも、海斗にキスされた時嫌じゃなかった…。
むしろしっくりくるような…。
あ~~~~っダメダメっ頭の中ぐちゃぐちゃっ!!
ぐるぐる廻る想いを吹っ切るように走って帰った。
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