先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
山片課長の声と同時に会場が暗くなり、前方の舞台にスポットライトが当たる。
司会進行の人が開幕のアナウンスをすると、会長、社長とあいさつが続く。
「この度、曾祖父が小さな店から始めた我社は ~~」
長い挨拶にいつ終わるだろう…なんて考えてたら、後ろから声がした。
「よう、知佳ちゃん」
振り返ったら、待ち人、日野さんが立っていた。
「ひっ…」
日野さん!と叫びそうになった口を慌てて両手で押さえた。
「悲鳴を上げようとするなんて、ひどいな知佳ちゃんは」
面白そうに笑って私の隣に移動した日野さん。
「ち、違います!日野さんって言いたかったんです!」
誤解を解こうと小声で訴える。ククッと笑った日野さん。
「わかってるよ。」
そう言いながら私の姿を下から上へと目線を走らせる。
「へぇ、知佳ちゃん可愛いね。ドレス姿似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます…」
ほっ誉められた!嬉しい!
日野さんもスレンダーなスーツにいつもより派手目なネクタイが華やかですごく似合っていた。
ニヤニヤしてたら隣の紗季につつかれた。
いけない、いけない。平静を保たなくては。
コホンとひとつ咳払い。
「お、遅れてきたんですか?」
「ああ、渋滞に巻き込まれてね。ちょっと遅れたけどセーフだろ?」
「まあ、こんなにいっぱいいたら分かりませんよね」
二人で笑っていると、日野さんが急に真顔になった。
「知佳ちゃん、パーティの後少し時間が欲しいんだ。いいかな?」
「え‥はい。なんですか?」
「話はあとで。山片さんが睨んでる」
「えっ」
ぎょっとして山片課長のいる方を見るとじろりと睨まれた。
社長の挨拶中に喋るとはなんだ!と、目が訴えてる…。隣の花笑さんは苦笑いしてこちらを向いていた。
私は肩を竦め軽く頭を下げて前を向き、真面目に社長の挨拶に耳を傾けた。