先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「あ、すいませんね、こいつ酔っぱらってるんで僕が送らないといけないんですよ~。これも先輩の仕事でねぇ。じゃ、失礼しますよ」
一気に早口でしゃべり渡辺にニコニコと愛嬌を振り撒き、私の肩に手を回したと思ったらスタスタと連れ去った。
振り返ると唖然としてる渡辺。
「ちょっと!何よ小山!離してよ!」
「まあまあ」
外に出て混雑してるホテル前を避け、繁華街に向かっている。
離せと言ってるのになだめられ、近くに停車していたタクシーにそのまま押し込まれた。
「お前、家は?」
「はあ?」
不機嫌マックス。何なの?
「住所言わないと送れないだろ?それとも俺のウチ来る?」
ニヤリと笑われイラッとしながらも運転手さんに住所を告げた。
走り出した車内。シートに背をあずけ腕を組んで横目で小山を睨む。
「何なの一体。いつあんたに送ってなんて約束した?」
「なんだよ、連れてかれそうになってるの助けてやったんだろ?感謝して欲しいね」
「別に助けてなんて言ってないでしょ!」
「じゃあ、あのまま連れてかれても良かったのか?」
「……」
良くはない。
今日はそんな気にならなかったからほんとは助かった。でも言わない。
むくれたままつんと目線を外に向けた。
「もう少し自分大事にしろよ。そんな男を誘うようなドレス着て見せびらかして媚び売って、いい女なんだから安売りするな」