先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
支払いを済ませて店の外に出た。
「日野さん、ありがとうございます。私たちの分まで払って頂いて」
「ああ、気にすんな。他に出してくれるパトロンがいるからな。後で請求してやる」
迷惑料だ、後でふんだくってやる。にやりと悪い顔で笑った。
「えっパトロンって?」
「夏野、タクシー来たぜ」
置田がタクシーを止めて待っている
「あっでも花笑さんが・・・」
松崎のこと心配する夏野さんに
「大丈夫だ、すぐ迎えに来るから」
と、安心するように言ったら、
「あの、迎えって誰が?」
「あー家族?」
なんとなく歯切れ悪く答えてしまった。
「花笑さんって一人暮らしじゃ・・あっもしかして彼氏?」
「おまえ、どこまで知ってる?」
思わず睨んでしまって夏野さんが焦っている。
「えっいや、彼氏みたいな好きな人がいるとしか」
「そうか、ま、気にすんな。早く帰れ」
ちょっと悪いことをしたと思いながらほっとして目を逸らした。
何も目くじら立てる事もなかった。
夏野さんが二人のことや過去のことを知ったからといって、何かするとは思えない。
彼女は松崎のことを慕っている。
逆に話した方が理解者が増えて松崎にはいいかもしれないな。
なんて思いながら置田達の乗ったタクシーを見送った。