先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
程なくして、1台の白いセダンが目の前に現れた
相変わらず松崎は起きてるんだか寝てるんだか、完全に酔っている。
「おっ、王子様のご登場だ。あ、いや、魔王様か?」
不機嫌マックスで運転席から出てきた山片さんは、こちらに来ながら
「あ?なんか言ったか?」と凄む。
山片さんは俺が新人の頃の指導係でもう3年の付き合い。
プライベートでもよく可愛がってもらったからこの人の性格もだいぶわかっている。
だから鋭い目付きで凄まれても今はへっちゃら。
新人の頃はかなりビビったけど…
「全く、泥酔のお姫さまを保護してやってるのにその態度はないでしょうよ~」
助手席を開け、松崎を受け取りながら山片さんは
「…二人で飲んでたのか?」なんて言ってる。
これはもしや嫉妬ですか?
「なーにやきもきなんてしてるんですかー?松崎は夏野さんと飲んでたんですよ、俺は置田と。
同じ店だったけど気付かなくて、帰り際に会ったら松崎が酔いつぶれてたんで、わざわざ山片さん呼んであげたんじゃないですか。ピーチサワー1杯でこれですよ?しかも松崎達の支払いも俺がしたんですからね~」
山片さん怒らせるとさすがにヤバいから、ちょいちょい文句を言いながらも早口で説明した。