先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
最初ムッとしてたけど、ちょっとばつの悪そうな顔になった山片さんは、
「そうか、悪かったな」と言って松崎を助手席に座らせ、ずれてた眼鏡を外し自分のポケットに仕舞って、おもむろに財布を取り出し2万円を渡してきた。
「どうも、毎度ありー」
ふざけ半分で素直にもらっておく。多くもらったが、今度山片さんと飲みに行った時に俺が払えばいいから問題ない。うん。
「山片さん、いつまで拗らしとくんですか?松崎のこと」
「…別に、拗らしてるつもりはない」
「またまた~この前松崎言ってましたよ、ちゃんと付き合ってる訳じゃないって。お互い好き合ってる癖に付き合ってないなんて拗らしてるとしか言えませんけど?」
「……今はどうこうするつもりはない」
助手席を静かに閉め、こちらを振り向きもせず答えて運転席に向かう山片さんに問いかける。
「松崎、結構人気あるんですよ!そんな悠長にしてたら誰かに横からかっさらわれますよ!何なら俺がもらっちゃいますけど?!」
ぎろりとこちらをひと睨みして「じゃあな」と言って去っていった。
「おお~ぅ、あぶねあぶね。逆鱗に触れる一歩手前ってとこか」
去っていくテールランプを見つめながらフーッと息を吐く
何があの人のブレーキをかけてんだか、さっさとくっついてくれりゃいいのに。
なんとも言えない感情を込めながらもう一度息を吐いて俺も帰路についた。