【完】さつきあめ
「おはよ。さくら、早いなー」

「さっき高橋君にラインいれたよ?
今日は同伴だって」

「の割にはもうセットもしてるし、早いじゃん」

「同伴行く前に売上表のチェックしにきただけ」

「へぇー真面目ー!てか髪超いいじゃん!今日美容室行ってきたろ?いい感じ。良く似合ってる」

さりげなくわたしの髪に指を通す。
高橋の女の子への目は相変わらずで、今日美容室に行ってきた事をいち早く気づき、それを1番に気づいてくれた。
ぼんやりと、この人も野心家なんだなぁ、と近頃思う。
光や朝日のように野心家でなくてはこの世界では上には上がれない。呑気にカップラーメンをすする深海を見て改めて感じた。
けれどわたしは初めて働いた深海が店長のお店が好きだったし、深海の考え方が好きだった。
深海はいつだって水上がりする女の子を喜んで送り出すような人だったから

高橋を振り切り、売上表のチェックをする。

11月も半分を通り過ぎた頃。
まだ綾乃の方が売り上げは上。
けれどレイの接客の真似を辞めた今、わたしのお客さんは順調に戻ってきていて、指名本数では綾乃を超えていた。そして売り上げさえも手を伸ばせば届きそうなくらい近づいてきていた。
勝ちの目が見えてきてるとさえ、感じていた。

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