【完】さつきあめ
にこりと優しく微笑む。優しい喋り方も、カジュアルで決して派手ではないけれど身に着けているものもセンスが良い。
高橋は33歳と言っていたが、20代でも通りそうな感じがする。
一目見て、席について、話して、鼓動が高鳴るのを感じる。
お客さんにこんな気持ちになったのは初めてだった。
雰囲気は社長さんというよりも、爽やかな若いサラリーマンだった。夜の匂いがしない、昼の住人なのは見ても明らか。…でもこの人、雰囲気が少し光に似てる。

「なぁに、さくらボーっとしちゃってるのぉ??」

そこには美優の姿もあった。
隣にいるのは桜井の連れの山田社長だと言う。
美優も山田社長に指名を貰ったという、さくらと違って場内だけど、とちょっと拗ねたそぶりを見せれば、山田は慌てて次からは本指名するから、と笑った。

「あの、なんで話した事もないのに…あたし本指名なんでしょうか?
せっかくですし、もっと色々な女の子と話した方が楽しいと思いますけど」

「あんまり色々な女の子をころころと付けられるの、好きじゃなくて。
あと、君がホールを歩いているのを見かけて、つい」

桜井は優しい笑顔で、頭をかきながら照れ臭そうに笑う。

「桜井社長ね~さくら見て可愛いって!あの子が本指名がいいって~!!」

「えぇ?!」

「俺は何事も直感型だから。なーんて、あまりにもさくらちゃんが綺麗すぎたから突然指名しちゃって、ごめんね?びっくりしたでしょ?」

「いえいえ、全然嬉しいですけど…」

本当に社長なのかと思う程、腰が低い人だった。
全然偉そうにもしなくて、話しやすい雰囲気を作ってくれるタイプ。照れ臭い言葉もさらりと自然に言ってのける。
本当に雰囲気も、光に似ている人だ。

< 185 / 598 >

この作品をシェア

pagetop