【完】さつきあめ
「桜井君は僕も期待してる若手社長なんだ。
自分だけの代で事業を広げてきた仕事の出来る男でね、今日も僕のおごりだから好きな女の子を指名しろって言って、選んだのがさくらちゃんだったんだよ」

「いえいえ、俺がここまで来れたのは山田さんたちのお陰っすよ~!
褒められると照れるなー!」

人当たりの良い人だな、って思った。
その場にいる人誰ひとり嫌な気分にさせない。周りを良い雰囲気にするのが上手な人。そういう才能を持っている人が時たまいる。

「さくらちゃんは何歳なの?」

「あたしは20歳です」

なんて、本当は18歳だけど。

「若いなぁ~!俺と13歳も違う~!
めっちゃ親父じゃん、俺ぇ!」

「いやいや、桜井さんすっごく若く見えます!かっこいいし…」

「やぁー、こんな綺麗な子からお世辞でもかっこいいとか言われると照れるなぁ…」

実に聞き上手で、話し上手な人だった。
わたしの話を聞きながら、自分の事も沢山話してくれた。
社長ではあるけれど、家が貧乏だったから中卒だということ。
高校に行かずに働いて、会社を若く立ち上げたこと。
近郊でカフェやレストランを何店舗か経営していること。そのカフェはわたしたちでも聞いた事のあるような若い女の子に人気のカフェだった。
20歳で結婚していて、中学生の息子がいるのにはさすがに驚いた。

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