【完】さつきあめ
ここでいくらお金を落とそうと彼にとって何の痛手もないのだろう。
けれど、家族は?本当に苦しんでないと言えるのだろうか。
わたしが彼の奥さんであれば、子供であれば、きっと寂しいはずだ。

「そぉーんな事ぁ~考えないでいい!!だからあんたはキャバ嬢向きじゃないの!そういう考えは!」

営業終了後、わたしははるなに強く怒られていた。

「キャバ嬢っていうのは客のお金を底の底まで奪い取る仕事なの!」

「はるな、こわ~い~!」

「でもはるなちゃんだって…
いっつもお客さんのお金について考えてるじゃない。無理させないようにちゃんと計算してさー!」

「あたしの客と桜井社長はぜんぜーんちがーう!!
あの人は無限にお金があるような人なの!あるものからは奪えるだけ奪うんだよ!
あんた本当に甘すぎて呆れるわ…。
お店にあるボトル、全部さくらのためにおろしてって涙ぐみながら言ったらあの人だったらおろしちゃうでしょ!あの人さえいれば綾乃なんてとぉっくのとんまに抜かしてるのに、あんたが甘いから!もっと使わせなさいよ!それでナンバー1目指してるとかふざけんじゃないわよ!」

「はるな、ちょ~こわいって~!でも桜井社長は本当にいい人だし、やさおだもんね~!ああいう人騙したくない気持ちわかるぅ~!むしろ、抱かれた~い!ちょ~イケメンだし、中身もイケメンだし~」

「はるなちゃんの言うことも最もなんだけど…
桜井さんって何か…よくわからないっていうか…
こんなにお金使ってあたしを指名してくれる理由も…あたしに何を望んでるのかも全然わかんないんだもん…。
でも何も目的もなくて、あんなに毎日大金落とすのもおかしいじゃない…」

「あらぁ、でもあの人がいなかったら困るでしょ?」

「それは確かにそうだけど…」

「なら綺麗ごとばっかり言うのはやめたら?
どうせお客さんも水のように流れていくものだもの」

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