【完】さつきあめ
「さくら、VIPに指名のお客さんがくる。行けるな」

「え…こんな時間から?」

「小笠原さんだ」

何で?
小笠原はさっきゆりと同伴で入って、ONEに行ったはず。
シャンパンの飲みすぎで回る頭の中ではてなマークだけが浮かんでいた。

ふらふらな足元を支えるように深海がVIPルームまでわたしを連れて行く。

「お前はやっぱりさくらに似てるな」

「…」

「俺はナンバー1はお客さんの事を1番に考える女の子がなるのに相応しいって信念でずっと働いてきた。
俺がこの業界で働いてきて、初めて出来た夢はさくらがナンバー1で1番の店を作ることだった」

「さくらさんと?
何で?その夢はもう叶わないの?」

VIPルームの前で足を止め、振り向き、困ったように笑う。

「さくらは死んだんだよ」

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