【完】さつきあめ


「え、なになに?!会長もさくらの事好きなの?!」

原田とわたしの間を割って、ゆいが話に入ってくる。
誤解だ、と言い終える前に、ホールに大きな声が響いた。

「大樹!」

コツコツとヒールの音を大げさに鳴らし、近づいてきたのは、私服に着替えた凜だった。
派手な服装とブランドもののバックを持って、ファーのついたコートを羽織っている。
やはりキャバ嬢らしいキャバ嬢だと思った。
凜は、わたしとゆいをきつく睨んだ。

「おいおい、凛、店では大樹って呼ぶなよ~」

「別になんだっていいでしょ、それより今日うちに来るって言ってたよね?!
用がないならさっさと帰りましょう!」

大きな声でわざと聞こえるように言って、威嚇しているようにも聞こえた。

「はいはい~、なんかもぉ~、機嫌悪いなぁ…」

「早くしてよ!タクシー先に拾ってるからね!」

そう言って、凜はわたしたちを睨み、大げさな足音を立てて、お店を出て行った。

「更年期かな…」

ゆいがぼそりと言う。
それに原田はぷっと吹き出した。
…やっぱりわたし、こいつ嫌い。

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