【完】さつきあめ

高橋がそれだけ言い残して、自分の仕事へ戻って行く。
ゆいの無邪気な笑顔と、原田もこちらへ来て笑っていた。

「さくら、お疲れ。うん。今日はちゃんとしてるなキャバ嬢らしい。
さすがシーズンズのナンバー1。売り上げも見たよ」

「原田さんウケる、キャバ嬢らしいってなんだよー」

ゆいが突っ込み、また笑う。
原田に問いたい。わたしには厳しい事を言っていたくせに、髪形だの、メイクだの、キャバ嬢らしくしろと言ったくせに、隣で笑う女の子はクリスマスのコスプレをしなかった事を許すわけですか。
ゆいの気ままさに口を出す気はない。でも原田には不信感でいっぱいだった。

「お陰様で」

素っ気なく振舞ってしまうのは、光の代わりだという理由だけでなく、ちゃらちゃらしてる人間性が元々好きではなかっただけだ。

「なーんか、さくらには嫌われてるな~…」

「別に好き嫌いで仕事してるわけじゃないので」

「やっぱり、社長が大好きなんだね~」

こいつ。そう思って睨みつけた。
THREEでわたしと光が付き合ってると噂される通り、系列の間では広まっている話なのだろうとは思う。だけどわざわざ口に出されると、かちんとくる。

「まぁ会長と社長が取りあう程の女でもないと思うけどね」

「なんか誤解が?社長とあたしはそもそも何もありませんし、会長はゆりさんがいるでしょう?憶測で物を言うのは止めてもらえますか?」

< 342 / 598 >

この作品をシェア

pagetop