【完】さつきあめ
「わたしのお客さん、今月なるべくあんたに紹介するから」
「いやー…そんな…」
「わたしのお客さんはこの間も言った通り、さくらみたいなタイプが好きなの。長い付き合いなんだからそれくらいわかってるわ」
「てゆーか凛さん!本当にお店辞めるつもりですか?!」
「うん。今のところはね」
「もったいないです。凛さんはお客さんも沢山持ってるし、まだまだお水上がるには早すぎます!この間も宮沢さんが凜は双葉がいいって!凛さんなら由真さんの片腕になる実力持ってるって言ってました!」
凜は目を丸くし、ふっと笑う。
「それに凛さんこの仕事好きでしょ?」
「この世界には賞味期限があるってわたし思ってる…。
何歳になってもこの世界でやっていけるプロ…双葉の由真ママみたいな人もいるかもしれない。でもあたしにはその才能はないかな…?
だめなの、あたし。
すごい負けず嫌いだから、あなたやゆいとか若い子たちにも負けたくないって大人げない感情だってすぐにわいちゃうし、もう結局限界なの…」
そう話す凜はいつになく弱弱しかった。
ずっと強い人だと思ってた。
でもこの世界で生きている人間で、本当に強い人なんているのだろうか。
いつも何かに追われている。弱さを隠すのは、その先にある大きなプライドのため。
わたしたちは順位をつけられる。
目に見えるお金のためだけじゃない。目に見えない物の方が、真実が見えにくい職業だからこそ大切だったりするんだ。