【完】さつきあめ

「へぇー、でも元カノは風紀って奴じゃあないなぁ。
だって、自分のお店の黒服と付き合ってたわけじゃないから」

「あぁ、他店同士?じゃあ風紀じゃないね。
しっかし世の中には涼みたいなイケメンを振る女の子もいるんだね…」

「俺イケメンじゃないよ。それに浮気相手の男かっこよかったし。
ちらっと見た事あるけど、あーあれじゃー俺敵わないわーって思った。でもそう思ったって事は元カノの事あんまり好きじゃなかったんかな…」

「んん~…どうなんだろう」

「さくらは彼氏いるの?」

一瞬頭に光の顔がよぎった。
こんなに狭い街なのに、光とはあれからぱったりと出会う事もなくなった。
それでもわたしは外に出る時はいつだって何度も何度も後ろを振り返りながら歩いていた。
どこかに光がいるんじゃないかって、偶然出会えるんじゃないかって。
実際事務所に行けば会えるのだが、いつまでも未練たらしい女には思われたくなかった。
わたしはいつだって、光の前では強い人間でありたかった。

「彼氏なんかいないよ…」

「さくら綺麗だからモテるだろう」

「モテないよ!それにあたしも涼と同じような感じだし。
浮気…てゆーか…あたしの場合付き合ってもいなかったんだけどね、好きとは言われてて待っててほしいって言われたけど、結局彼女作っちゃった…」

「まじか、お前を振るなんて馬鹿な男だな」

「だから涼はー!そんな女の子きゅんきゅんさせるセリフ次から次へとよく出てくるねぇ~!」

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