【完】さつきあめ
「夕陽はだいじょうぶか?明日も仕事なんだからあんまり無理するなよ。電話して声聞きたかったけど、今日は寝な。おやすみ」
朝日の家で、光に電話なんか、そんな無神経な事出来ない。
やっぱり今すぐに家に帰ろう!そう思って、寝室で寝ていた朝日の姿を見に行った。
男の人のわりには静かに眠る人。
光も静かに眠る人だった。
朝日は大きなベッドで端っこで小さくなりながら、息をしてるのかしてるのかわからないくらい僅かな寝息を立てる。
ベッドサイドに座り込んで、朝日の寝顔を覗く。
口を開かなければ、結構綺麗な顔。
その時、変な違和感を覚えた。
いつかも、この人の寝顔を見て、変な違和感を抱いた事があった。
「あ、、」
それに気づいて、立ち上がろうとした、その時だった。
「ん…」
小さな声を立てて、朝日の手が、わたしの手を掴んだ。
強い力だったから一瞬起きているのかと思ったら、朝日は再び小さな寝息を立てた。
「宮沢さ…」
「さくら……」
うわごとのように、さくらと呟いた。
そのさくらは、きっとわたしじゃない。何となく直感でわかった。
光もこの人も、きっとわたし自身じゃなくて、わたし越しにもう会えないさくらさんを見つめている。