【完】さつきあめ
「あたしも古い知り合いに当たってみたわ
あれ、さくら?」
深海と話してると入ってきたのは綾乃とはるなだった。
「さくらーーーー!!!久しぶりー!」
はるなはわたしの姿を見つけると、苦しいくらい強く抱きしめてきた。
「苦しいってぇ!」
「え?何でさくらがここに?!もしかしてシーズンズに戻ってくるとか?」
「いや、戻れるものなら戻りたいけど…」
シーズンズは皆がいて、光とも笑い合えていた場所。わたしにとって思い入れの強いお店。
もう取り戻せない日々の中に、全ての幸せが詰められていた気がしてならない。
それとも戻らないと知っているから、こんなに尊いのだろうか。
「さくら、どうするの?」
はるなの横から、綾乃が顔を出して、心配そうにわたしを見つめる。
その綾乃の瞳が僅かに赤くなっていて、切なくなる。
綾乃はきっと、光の味方もしたいし、朝日の味方でもありたかったのだろう。
そしてその事情を深海も知っているだろう。
「どうするも何も…。今日もTHREEに普通に出勤するよ。
指名だって重なってるし、出勤しなかったらどうにもなんないよ…」
「そう…」
綾乃はホッとしたように胸をなでおろした。
「さくら…社長の方についていくと思ってた…」
はるながぼそりと呟く。