【完】さつきあめ
「それとこれとは話は別だよ。 光のやり方は間違ってると思うし…。
それにいきなりお店を辞める事なんか出来ない。
じゃあ、あたしTHREEに出勤するね!高橋くんと話したいこともあるし」
そう言ってシーズンズを出ようとした時、深海に引き止められた。
「さくら!」
振り向くと、深海の柔らかい笑顔が目に入る。
物静かで多くを語らないこの人が、最初の頃は怖いと思っていた。
でもこの人はいつだってわたしを心配してくれていた。
「お前なんかやっぱ強くなったわ、てか風格出てきた」
「風格?」
深海の言葉に、くすりと笑みがこぼれる。
「お前、本当にTHREEのナンバー1なんだなって…。店を背負ってるんだなぁって、さ。
シーズンズの事は心配しなくていい。俺の古い知り合いにも何人かあたってるからさ。
だからさくらは安心してTHREEで仕事して」
「ありがとう、深海さん」
THREEではゆいと凛を管理していた原田。
そこまで派手に女の子が抜ける事はないと思ってた。
けれど、やはり何人かレギュラーの女の子が辞めていた。
THREEに着くと、高橋と小林、そして朝日がお店に来ていて、何やら話をしていた。
「さくらちゃ~ん!!おはよぉ!!出勤してくれて良かったぁ~!!」
わたしを見つけると、小林が心底安心したような笑顔を浮かべ、猫撫で声で近づいてくる。
「さくらおはよう」
高橋がわたしに目をやり、隣にいた朝日はびっくりしたような顔をしてわたしを見る。
わたしを見つけた途端、手を引っ張り、店の隅っこに連れて行かれる。