【完】さつきあめ
涼は朝日を王様扱いしない。
お店でも、この夜の街のどこにいても、朝日にぺこぺこするばかりの人間の中、涼は一切特別扱いなんかしなかった。
そして朝日もそんな涼を嫌ってるようには見えなかった。
涼のいないところで、この世界にひとりくらい自分に反抗してくる人間がいてもいい。と笑いながら言っていた。
そして涼も涼で、宮沢さんの事嫌いじゃない。と言ってる事をわたしは知ってるのだ。
というわけでわたしのテリトリーに朝日がいつもいる羽目になる。
「さくら」
「ん?」
「ナンバー2おめでとう」
ニヤリと笑って朝日が言う。この態度が相変わらずむかつく。
「嫌味ですか?どーせあたしはゆりさんには敵いませんよ」
「は?褒めてるんだけど?
2番すげぇじゃねぇか。お前ら女はいつも1番だか2番だかに拘ってて俺には意味がわからん」
ゆりはきっと朝日のためにナンバー1で居続けているのに、この人はちっともわかっちゃいない。
この世界で1番でいる事は、この世界を生きる私たちにとって、お金よりも重要な事だったような気もする。
「それよりおっさん、こいつ痩せすぎじゃね?」
「おお、この間から俺も言ってるんだけど、ちょっと気持ち悪ぃな。
まぁ俺は痩せてる女が好きだけど、最近のお前は異常だ」
「うるさいなぁー」
「ということで、今日さくらの家に行きません?」
「はい?」
涼のとんちんかんな提案に不快な顔を見せた。
「俺こう見えても料理上手なんすよね。
おっさんは材料費払う係ね」
「俺はお前の財布か」
「いいじゃん、腐るほど金持ってんだろ?けちけちするなって!」
「男には1円も金を出したくないね」