【完】さつきあめ
「す、好きなわけないじゃん…」

好きなわけない。
けれど美優の言った、社長が休みの日にお店の女の子と遊ぶのは珍しいことじゃない。その言葉にショックを受けている自分も確かにいて。

「ならいいけど…」

「綾乃ってそんな風紀に厳しかったっけ~?うちなんてトップが風紀してるようなもんなんだから暗黙の了解じゃぁ~ん!あたしも禁断の恋してみたぁ~い!」

呑気な美優とは真逆に綾乃は真面目な顔をしていた。

「別に風紀が悪いってわけじゃない…。あんたが高橋や深海さんを好きになっていても全然応援できた。
でもダメ…。有明だけは絶対にダメ」

綾乃は有明だけは絶対にだめだと頑なに言い張った。

「社長の事なんかこれっぽっちも好きじゃないよ…でも何で…綾乃ちゃん…」

「さくらと有明は絶対に幸せな結末をむかえることが出来ないからよ…」

あの日そう言い切った綾乃。
わたしは何も知らなかった。
綾乃がなぜあんなに止めたのかも、綾乃と光の関係も
けれど恋というのは気づいた時にはもう落ちているもので、この光とわたしの恋の始まりがあんな悲しい結末になるなんてこの時はなにひとつわかってはいなかった。

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