何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
むしろ、昨日会ったばかりの私を、よく悠のお母さんは不審に思わないなあと思う。

嘘をついて悠に近づこうとしたんじゃないかと決めつけて、追い出したっておかしくないのに。


「きっと、そのうち悠の記憶も戻るわよ。それまではどうしようもないわ。そうよね?」


同意を促すように、私と美香ちゃんを交互に見る悠のお母さん。

確かに、悠のお母さんの言う通りだ。悠の記憶がない今、いくら私が彼女だって主張したって、どうしようもない。

証拠だってないんだから、彼の記憶が戻るのを待つしかないのた。ーーだけど。

今までの私たちの思い出が全部なくなってしまったように感じられて。

……悲しいよ、悠。


「ーー分かりました。記憶が戻るのを、私は待ちます」


泣きそうになるのを堪えて、私は毅然として言った。ーーしかし。


「えー、私が彼女なのになあ。せっかく悠とラブラブできると思ったのにー。もう、変な言いがかりつけられてマジ迷惑だよー」


美香ちゃんが可愛らしく口を尖らせながら、私を一瞬鋭く見て言った。


「こらこら、美香。ダメよ、記憶が戻るまで待ちなさい」


悠のお母さんはそんな美香ちゃんを嗜めたけれど、彼女にとっては可愛い姪なのだ。本気で怒ってはいないような、優しい口調だった。
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