何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
何か反論しようと思ったけれど、うまく言葉が出てこない。もともと口下手な私が、あんな風に饒舌に話す女の子に、太刀打ち出来るわけがなかった。


「もしかして、あなたって友達いないの? だから、昔少しだけ優しくしてくれた悠にすがってるの? 不器用だけど頑張りました的な、手料理まで作ってさあ。悠が忘れちゃうほどの子だったのに、かわいそうだねー」


そして、私の方に詰め寄りながら言う口調は、やたら苛立っているような印象を受けた。

懲りずに毎日毎日悠のところへ通う私が、とうとう邪魔になったのだろう。


「まあ、あなたのその見た目じゃ、素行もそんなによくなさそうだもんねー。本当に友達いなそう。ーーねえ、悠が怖がっちゃうからさ。もう来なくていいよ、マジで」


どんどん私を追い詰めていく、美香ちゃんの言葉たち。

見た目でよく怖がられること。少し前まで、ほとんど友達がいなかったこと。

過去のトラウマが次々に掘り起こされて、私は何も言えずに俯いてしまう。

ーーすると。


「ーー美香」


ひどく低く、冷涼な声だった。怒気がはらんでいるようにも聞こえた。

あの、穏やかな悠から発せられた声だとは一瞬信じられなくて、私は耳を疑う。

悠な口を引き結んで、冷たい表情を美香ちゃんに向けていた。彼のそんな表情を見るのも、初めてだった。


「俺のために来てくれている子に、そんなこと言うな」
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