【バレンタイン短編】同期から贈られたおまじないは、キス。
そっと包むように腕が回されている。


「史穂」
「や、柳田く……」
「緊張してる史穂、見てらんないんだよ」
「だから……い、いつもの、ことだし……」
「だからどうにかしてやりたいんだよ。なあ史穂」


さっきまで触れる程度だった腕にぎゅっと力がこもった。きつく抱きしめられる。

どきどき、どきどき……。自分の鼓動がはっきりと聞こえる。どきどきし過ぎて胸が痛い。

どうして。
どうしてこんなことするの?
さっき由佳が言ってたのって、柳田くんは私のことを?

だめ。頭の中までどきどきして、何も考えられなくて。この腕を解かなくちゃと思うのに手も動かなくて。


「大丈夫だから。プレゼンは俺もついてるから。安心して」
「そ、そんなこと、言われても」
「これ、おまじないだから。史穂が緊張しないための」


更にぎゅっと抱きしめられた。


「俺が守るから。不安になるなよ」

< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop