【バレンタイン短編】同期から贈られたおまじないは、キス。
「……うん」


柳田くんは腕の向きを変えて、ふんわりと私を抱きしめ直した。優しく包み込むように。


「もうひとつ、おまじないがあるんだけどさ。欲しいか?」
「え……?」


柳田くんは腕の力を緩めた。
その直後、こめかみに柳田くんの息がかかった。

ちゅ。
軽快なリップ音とともに当たったのは多分、柳田くんの唇。

キス。こめかみにキス。

突然こんなことされて、驚いてはいるけれど、イヤだと感じない自分。

私は柳田くんのことが好き?
柳田くんは?

柳田くんの気持ちを確認したくて振り返りたいけど、そんなことできない。柳田くんの顔なんて見れっこない。私のこと好きなんて聞けっこない。

私はフリーズしたふりで、そのまま柳田くんの腕の中にいた。


「ど……どうしてこんなこと、する、の?」
「お前が好きだからに決まってるだろ」
「だって、去年、チョコあげたとき、あまり喜んでなかったから、私からもらうのイヤだったのかな、って」
「ああ、あれ。他にも配ってるのを知って。そういうの、気分がいい男っているのか? 好きな子の手作りチョコがほかの男の口に入るなんてさ」
「あれは、大量に作っちゃって、その、そんなに意味はないっていうか」
「それでもイヤなんだよ」
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