純真~こじらせ初恋の攻略法~
私の頬に伝う涙を優しく拭ってくれる藤瀬くんの手が、微かに震えているのがわかった。

震えた手は私の頬を包み込み、親指で何度も何度も撫でる。

「茉莉香……」

そう呼ばれると、一瞬にして私は藤瀬くんの腕の中に閉じ込められた。

きつく抱きしめられて、これが夢ではなく現実のものなのだと実感する。

「その言葉を何回も何十回も夢で聞いた。目が覚めるたびに落胆してたのに、こうやって現実世界で聞く事ができるなんて信じられないよ」

耳元で聞こえる藤瀬くんの声も、私からすれば現実のものとは思えないのだけれど。

「やっと茉莉香に言えるんだな。好きだって。いや……愛してる」

私の全身を痺れさせる藤瀬くんの言葉。

好きよりももっと大きな、最上級の告白は、私の全てを満たしてくれた。

「私も言い表せないくらい愛してる」

しがみつくようにしてそう告げると、藤瀬くんは腕を緩めて私を真正面から見つめる。

先ほどまでの藤瀬くんの視線とは違う、別の色が混ざっていることに、私はいち早く気付いてしまった。

あの頃の藤瀬くんとは違う、初めて見た愛欲の色だ。

以前会社で押し倒された時は欲に怒りが見え隠れしていたけれど、今は純粋に私を求めてくれているのだとわかる。

心の全てを解放した私だって、きっと同じ目をしているのかもしれない。

いっそのこと、身も心も全部藤瀬くんに曝け出してしまいたい。

ふしだらにも私はそう望んでしまった。

自ら顔を寄せると、私は吸い込まれるように藤瀬くんの唇に自分を重ねた……。
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