純真~こじらせ初恋の攻略法~
私の心になんとなくの気まずさを残したまま週は明けた。

元気よく会社へと入り挨拶すると、案の定いち早く私の元へと駆け寄ってきたのは湯川さんだった。

「橘さん、あのあと大丈夫だった?ちゃんと帰れた?藤瀬から何かされなかった?」

「はぁ……」

いかにも心配気にそう聞いいてきたが、きっと湯川さんが一番知りたいのは、藤瀬くんとの私の間に何かなかったか。

その一点だろう。

「何もあるわけないでしょうが」

私よりも早くにそう答えたのは、先に来てもうパソコンに向かっている藤瀬くんだった。

「そんな確認しなくても、俺がさっきからそう言ってんのに信じないんだもんなぁ」

溜め息混じりにそう言った藤瀬くんの顔は、心底面倒くさそうな顔をしている。

きっと朝からずっと事細かに説明を強いられていたに違いない。

「あのあと直ぐにタクシー拾って帰りました。もちろん一人で」

最後の付け足しを強調し、湯川さんだけではなく、赤澤さんも含めた他の人にも聞こえるように少し大きめの声でそう言った。

この前もそうだったけれど、藤瀬くんから否定されるのは癪なのだ。

それが何故なのかはわからないけれど、どうしてもそれが引っかかる。

そんなにムキになることでもないのに。

今度飲みに行った時は自分が送るから、と予定を聞いてくる湯川さんを引きつった笑顔で交していると、井手口部長の朝礼が始まったので上手く逃げることが出来た。
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